大陸横断特急カナディアン号の4日目は、カナダ中央部の大平原を走るのとは全く趣が変わった旅になりました。線路付近にまで迫って視界をさえぎる森と林、その中で時折、沼地や湖が現れます。

*(オンタリオ州を行くカナディアン号)
オンタリオ州は面積が日本の約3倍もある広大な州ですが、広い大地に大小さまざまな湖や沼が点在します。「カナダでは、一人が一つずつ湖を持つ」といわれますが、オンタリオ州はその代表格。その昔、氷河が残していった湖や沼なのです。
森の中を走る列車の右に左に、ひっそりと置き忘れられたような沼や湖が現れては消えて行きます。川を横切ることもあります。昔の毛皮商人は、湖や沼を縫うように流れる、こうした川をカヌーで行き来し、先住民から毛皮を集めてまわったといいます。
今日は、一日中この森と湖という風景につきあうことになりました。携帯電話も一日中圏外です。

(視界をさえぎる森と林)
こうなると、勢い楽しみは食事になります。朝食と夕食のメニューは前にご紹介しましたが、昼食の写真を。特に昼食の巨大なしいたけ(?)を焼いて挟んだハンバーガーは、シンプルながらとてもおいしかったです。

(昼食のきのこハンバーガー)
さて、(当たり前ですが)食事が終わっても景色は変わりません。日没近くになっても、車窓から見える風景は基本的に同じです。いつまでたっても変化のないシンプルな風景。これが朝から15時間も続いています。
それでもやはり、「あれ、針葉樹ばかりと思っていたが、広葉樹が増え始めたぞ」とか、「木々が低くなって丘が見え始めた。ようやく森が終わるのか」とか、ちょっとした変化を見つけては、一人、納得しようとしている自分がいます。
しかし、オンタリオ州の風景はそんな一筋縄に行くようなものではないのです。変化を期待するこちらの気持ちなど簡単に裏切られてしまいます。

(ペリカンがすむ川)
やっと少し風景が変わってきたと思っていると、再び目の前に森と林が迫ってきます。そして、また同じような風景が延々と続くのです。
要するに、オンタリオ州はちまちまと小さな変化を見つけたがる日本人の感覚など吹き飛ばすくらいに広大なのですね。そんなことをいやでも思い知らされました。

(ちょっと変わってきたかな?)
5日目、最終日の朝5時。窓の外を見てびっくりです。わずかに色を変えた夜空を背景にして、昨日と変わらない森と林の連なりがまだ黒々と続いているではありませんか!これで丸々24時間、同じ風景の中を走ったことになります。
距離にすると1300キロ(日本なら東京から福岡を過ぎて熊本くらいまで)。唯一違いを見つけるなら、樹木の種類が大分変化して今度こそはっきりと広葉樹が増えてきたことくらいでしょうか。
午前9時10分。「あと20分でトロント!」というアナウンス。低気圧を追い抜いたのでしょうか、すっかり晴天になりました。
しかし、窓から見る風景はまだ緑に覆われています。列車はトロントの直前まで緑の中を走り続け、やがて、その緑の間から高層ビルが見えてきました。

(トロント駅の近くで)
9時35分。カナディアン号はカナダ最大の都会であるトロントの駅のホームに静かに滑り込みました。バンクーバーから82時間、ジャスパーからでも62時間の旅が終わりました。
乗客たちが旅の間に親しくなった人々に別れを告げながらホームを歩いていきます。私たちも、86歳で一人旅のシンディに手を振って、夏の日がまぶしいトロントの街に出ました。

*(トロント駅に着いたカナディアン号)
さて、様々にカナダと言う国の広大さと懐の深さを体感したカナディアン号の旅ですが、次回が最終回。終点トロントでのお楽しみとして、ナイアガラの滝とワイナリー訪問などをご紹介します。
*は写真家 中島賢一さん撮影
|