いきなりですが、次の中国語の日本語訳は何でしょう。
①氨基酸
②谷氨酸
③柠檬酸
ご承知の通り中国語は漢字表記のことばです。カタカナ言葉は、基本的に漢字に転換しなければなりません。「ハイブリッドカー」は"混合动力车"、「テーマパーク」は"主题公园"といった具合です。
カタカナ言葉(外来語)の多い分野の通訳をするとき、中国語通訳者は実は結構大変な思いをしています。プロの通訳者だからといって何でも知っているわけではありません。どんな仕事でも会議本番に向けて専門用語を辞書やネットでひとつひとつ調べあげる地道な準備作業が必要になりますが、カタカナ言葉はその最たる例とも言えます。
因みに上記の答えは、①アミノ酸 ②グルタミン酸 そして③は...
「レモン酸」とお答えの方、残念でした。正解は「クエン酸」です。
つい原文につられてしまいますが、同じ漢字だからと、そのまま訳せばいいものばかりではありません。
なるほど「クエン酸」はレモンなど柑橘類に多く含まれる物質なのですね。同じような例で、にんじん("胡萝卜")に豊富な「カロチン」は中国語で"胡萝卜素"。
ところで日本の化粧品は中国で人気が高いそうです。化粧品もカタカナ言葉の多い分野ですが、これを中国語で見てみると、「なるほど!」と頷けるものが多くて面白いです。
クリームは"乳霜"
アイシャドウは"眼影"
フェイスパックは"面膜"
私がいま一番気になるお肌のお手入れは「アンチエイジング」。中国語では、ずばり"抗老保养"。直球を投げつけられるような気がします。
では逆に、通訳現場で"抗老"という中国語を耳で捉え、とっさに「アンチエイジング」という言葉が浮かぶかどうか?「老化防止」や「加齢対策」と訳す方がしっくり来るのか?訳語の選択はテーマや文脈によりますが、通訳者の知識や語感によるところも大きいと言えるでしょう。