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HUITTさんの おぼえた日記 - 2024年11月6日(水)

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おぼえた日記

2024年11月6日(水)のおぼえた日記

※ caption : card to pick up(esp. hyakunin isshu karuta) Minamoto no Toru by Peter MacMillan (百人一首カルタ・取り札)


11/06(水)

「陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑにー」

英語で読む百人一首 ピーター・J・マクミラン

不思議の国の和歌ワンダーランド 第14番

2022年5月20日 京都新聞デジタル所載





陸奥の
しのぶもぢずり
誰ゆゑに
乱れそめにし
我ならなくに




(百人一首カルタでの英訳)

My heart's as tangled
as the wild fern patterns
of Michinoku's Shinobu cloth.
Since it is not my fault,
Whom should I blame for this?

Minamoto no Toru




[現代語訳]

陸奥の信夫(しのぶ)もじずりの乱れ模様のように、私の心は忍ぶ恋で乱れているが、それはあなたのために他ならない。あなた以外のほかの誰かのために、乱れ始めたのではないのだ。



* 歌は新編国歌大観の「百人一首」を原本とし、表記は適宜、かなを漢字に改めています。






💠 新訳

My heart's as tangled
as the wild fern patterns
of Shinobu cloth of the far-off north.
Who else but for you
could I be dyed in this way?


🛣️🛣️👘👘 名歌ゆえレトリックの英訳に腐心 

今回の歌はレトリックを多く含む。まず陸奥は、「道(東海道)の奥」の地であった東北地方の東半分をいう。ここでは「陸奥のしのぶ」として、次に出てくる信夫郡(しのぶごおり)(福島県)の所在地を示している。信夫郡から産出される摺(す)り染めの布が「しのぶもぢずり」で、忍ぶ恋を暗示する。ここまでが乱れ模様の布を想像させる序詞(じょことば)になっていて、「みだれ」に掛かる。さらに下の句の「そめ」は、布を「乱れ染め」にすることと、自分の心が「乱れ初め」てしまったことを掛ける。他の誰でもなくあなたが私をこんなふうにしたのだ、と強く訴えかける歌だ。

ここに詠まれた二つの地名は、いずれも読者の連想を呼び起こす歌枕である。だが外国人には「信夫」が「忍ぶ」を連想させることや「陸奥」が「道の奥」の意であったことが伝わらない。歌枕では地名の意味だけでなく音も重要だと考えて、以前は「Michinoku」と訳していたが、今回は北の果てであることを表す「far-off-north」と訳してみた。「陸奥」には、遠くはるかな地に憧れる都人の心が込められていると思うからだ。『百人一首』が選ばれたのは、今回の歌の作者、源融(みなもとのとおる)が生まれてから400年後のことだが、百人一首』には歌枕を詠んだ歌が多く選ばれている。これは定家や彼の時代の興味関心を反映しているのかもしれない。

今回の歌は、『百人一首』に採取されるはるか以前から、名歌として知られていた。『伊勢物語』初段で男が女に贈った和歌「春日野(かすがの)の若紫のすり衣(ごろも)しのぶのみだれかぎり知られず」は、融の歌を踏まえた早い例である。主人公の人物像を紹介する初段で、透の歌を踏まえて詠む姿からは、主人公の機転や教養がうかがわれ、歌心に優れた理想的な恋人像として描かれている。

さて、この歌が評価された理由は掛詞や縁語・序詞を利用したレトリックにあるだろうから、英訳もその再現を目指した。「tangled」は糸が絡まることや、もつれた感情を表す時に使う語である。具体的な場面と抽象的な場面の両方で用いるため、この歌の衣を中心とした比喩表現にぴったりだと考えた。また「dyed(染めた)」も、「乱れそめにし」の「そめ」の掛詞を英語で再現するために選んだ言葉である。

実は以前はこの歌の下句を「誰ゆゑに乱れそめにし。我ならなくに」(誰のせいでこんなに乱れ始めたのか。私のせいではないーーあなただ。)と切って解釈していたが、『百人一首文法談義』(小田勝著)を読んで、「誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに。」(ほかの誰かのせいで乱れ始めた私、というわけではないーーあなたゆえだ。)と切る方がよいと思った。そのため今回、英訳を大幅に変えている。またこの歌は『古今集』と『百人一首』とで本文が異なっている結果、歌の詠まれた状況が違うものになっているので、それにも随分惑わされた。日本の古典を英訳する時には「しのぶもぢずり」の乱れ模様以上に、頭を悩ませることもあるのだ。



詠み人 河原左大臣

かわらのさだいじん 源融。822〜895年。嵯峨天皇の皇子だったが、源氏に臣籍降下した。『源氏物語』の主人公、光源氏のモデルの候補として名を連ねる。 

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