<現在進行形の -ing は動名詞か、現在分詞か>
動名詞と現在分詞は最初から同形だったわけではない。動名詞は古くから -ing 語尾だったが、現在分詞の語尾は -inde で、両者ははっきりと区別されていた。だが、[in]の音が共通していたために、時間が経つにつれ -ing 形に吸収されていった。また、名詞として扱うか形容詞として扱うかがあまり意味をなさない場合もあるので、機能の一部が相互に乗り移った面もあった。
次の例では、-ing を動名詞ととっても現在分詞ととっても構造・内容ともに差がない。
photographed her changing 彼女が着替えているところを写真にとった
この changing を動名詞とするか現在分詞とするかは難しい。動名詞ととると her がその意味上の主語になる。現在分詞なら知覚動詞の文と同じ形になって her は目的語になる。saw her changing と同じ形だから、changing は現在分詞と考えなければならない。
次のように、前置詞 in がすっかり廃れたり、ほとんど使われなくなった動名詞は、分詞とみなすしかない。
You're so busy(in)looking forward, that you never take time to look back.
あなたは前をみることに忙しすぎて、後ろを振り返ることを忘れている。
You've done a great job(in)raising your kids.
あなたは子育てという立派な仕事をやりのけた。
今日、進行形と呼ばれる構文(be doing)は、実は、be on + 動名詞から発達したものである。以下のような経過をたどって、動名詞が結果的に現在分詞と認識されるようになった。
be on thinking 「考慮中」のような意味 ①
→be a thinking on が弱化し[ə]に近い音になる ②
→be thinking [ə]が消え、 be と動名詞が連結する ③
動名詞の-ing 形は当初、純粋な名詞形成語尾(arrival の -al とかobservation の -tion)だったので、①は現代英語なら be on busy(勤務中で)に相当する名詞構文だった。それに対して、③では純粋な動詞形として扱われ、現在分詞と認識されるようになった。
※もともとは前置詞 + 動名詞の形だったが、前置詞がなくなったため、今は現在分詞と考えられている。