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HUITTさんの おぼえた日記 - 2024年10月11日(金)

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おぼえた日記

2024年10月11日(金)のおぼえた日記

※ caption : card to pick up (esp. in hyakuin isshu karuta) Kakinomoto no Hitomaro by Peter MacMillan(百人一首取り札)


10/11(金)

英語で読む百人一首 ピーター・J・マクミラン

2022年3月4日 京都新聞デジタル所載



「あしびきの山鳥の尾のしだり尾のー」英語で読む百人一首

不思議の国の和歌ワンダーランド 第3番


あしびきの
山鳥の尾の
しだり尾の
長々し夜を
ひとりかも寝ん


(百人一首カルタでの英訳)


The long tail of the copper pheasant
trails, drags on and on
like this long night alone
in the lonely mountains,
longing for my love.

Kakinomoto no Hitomaro



[現代語訳]

山鳥の垂れ下がった尾のような、長い長い夜を、私は寂しくひとりで寝ることになるのだろうか。

* 歌は新編国歌大観の「百人一首」を原本とし、表記は適宜、かなを漢字に改めています。




☆{新訳}


The
long
tail
of
the
cooper
pheasant
trails,
drags
on
and
on
like
this
long
night
alone
in
the
lonely
mountains,
longing
for
my
love.



聴覚、視覚両面に訴える表現

この歌は『万葉集』では作者未詳の歌だった。人麻呂の歌とされるようになった経緯ははっきりと知られていないが、『拾遺集』には人麻呂の和歌として載っていおり、『百人一首』もこれを踏襲している。

結句の「ひとりかも寝ん」の「かも」は、疑問に思いつつ嘆息する気持ちが含まれており、独り寝をしなければならないことが分かっていても、「ひとりで寝ることになるのか」と問いかけるところに、寂しさを受け入れきれない作者の気持ちが表れている。

さてその結句を導く初句から第4句が面白い。上の句は山鳥の長い尾羽を長い夜に例えている。恋しい人と離れて寝る夜は、いっそう長く感じられることだろう。山鳥は夜になると、雄(おす)と雌(めす)とが山を隔てて寝ると考えられていたことを思うとなおさらだ。山鳥が雌雄離れて寝る様子は、歌の主人公がひとり寂しく寝る様子にそのまま重なってくる。山鳥は長いものの比喩になっていると同時に、独り寝の象徴なのである。『百人一首』には、読むとその情景がはっきり思い浮かぶ歌が多いと思うが、この歌も山鳥の長い尾がありありと目の目に浮かぶ、視覚的な歌だと感じる。

そこで、英訳では単語をひとつずつ縦に並べることで、山鳥の尾羽の長さを視覚的に表してみた。これはルイス・キャロル『不思議の国のアリス』において、アリスが「ネズミのしっぽ」のことを考えている場面に着想を得たもの。場面に出てくる詩は、あたかもアリスの頭の中にあるネズミの尾(tail)のように配置されている。文字で描かれているのである。

この歌が刺激するのは、視覚だけではない。「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の」と、ノとオの音の繰り返しがなだらかに続くさまは、聴覚的にも夜の長さを感じさせるように思う。定家の父、藤原俊成が、「歌は発声して初めてその良さが知られる」と述べているが、この歌もその一例であろう。単に文字を追うだけではわからない魅力が、声に出すことで伝わってくるのだ。英訳でも「long」や「alone」など、オに近い母音を持つ単語を意識的に選び、もとの和歌よりオの音を増やすことで、一人寝の夜の長さが一層伝わるようにした。紙面ではわかりやすいように、和歌、英訳のそれぞれのオ段やオに近い色をつけてみた。

歌を翻訳する際に、どのように工夫するかと聞かれることがあるが、歌ごとに違った挑戦があって、一言では答えられない。この歌の訳では、聴覚、視覚の両面に訴える表現に挑戦した歌であった。日本にいると、「不思議の国の和歌ワンダーランド」にいる気になる。私は若いとき、西の果てのアイルランドから東の果ての日本へと冒険にやってきた。不惑、つまり40歳の頃、和歌の翻訳に真剣に向き合うようになった。今ではもう日本にやってきて30年以上になるが、冒険はまだまだ続いている。和歌ワンダーランドの奥深い世界は果てがなさそうだ。



詠み人 柿本人麻呂

かきのもとのひとまろ 生没年未詳。主に658年〜708年ごろに活躍した宮廷歌人。平安時代は「人麿」あるいは「人丸」と表記されることが多い。

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