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HUITTさんの おぼえた日記 - 2024年10月16日(水)

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おぼえた日記

2024年10月16日(水)のおぼえた日記

※ caption : Sarumaru Daifu by Peter MacMillan (百人一首カルタ)



10/16(水)

英語で読む百人一首 ピーター・J・マクミラン

2022年3月14日 京都新聞デジタル所載



「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿のー」英語で読む百人一首

不思議の国の和歌ワンダーランド 第5番




奥山に
紅葉踏み分け
鳴く鹿の
声聞く時ぞ
秋はかなしき




(百人一首カルタでの英訳)

In the deep mountains
making a path
through the fallen leaves,
the plaintive belling stag
how forlorn the autumn feels.

Sarumaru Daifu




[現代語訳]

奥深い山で、散った紅葉を踏み分けて歩いて行き、鳴いている鹿の声を聞く時は、ますます秋が悲しく感じられる。



* 歌は新編国歌大観の「百人一首」を原本とし、表記は適宜、かなを漢字に改めています。






💠 2008年に初めて訳した英文

Autumn at its saddest-
Rustling through the leaves
and moving on alone
deep into the mountains,
I hear the lonely stag
belling for his doe.




🍁🫎「I」は不要、人間は自然の一部

まず和歌と現代語訳をじっくり見てほしい。みなさんは、「奥山に紅葉踏み分け」ているのは誰だと思っただろうか。私は最初この歌の主人公である人間が歩いているのだと思った。しかし実は、「鳴く鹿」が「踏み分け」ているのだと取る解釈と、人が「踏み分け」ながら鹿の声を聞いているのだという両方の解釈が可能である。

和歌に限らず日本語では、動作をしているのが誰なのか、はっきりしないことが多い。例えば、『源氏物語』でも誰の動作や発言なのか、ただちに分からないことがある。読み取るには、敬語などの人と人の関係性を示す表現に気を配る必要がある。それは現代においても同じだ。「先輩」「後輩」というのは、人と人の関係性を示す言葉だが、それがそのまま、特定の人に対する呼びかけの表現にもなる。

こういった特徴は、言語や文法だけの話にとどまらず、文化そのものも映し出していると想う。特に、「人間」は「人」の「間」と書くのだと気づいた時には、神秘的な感動を味わった。人間を関係性で定義する文化と、個人として捉えていく文化とでは、人間の捉え方異なる。

もともと西洋においても、中世までは個としての人間ではなく神様が中心だった。詩でもI ではなく men(人間)が詠まれた。ところが、デカルトの「我思う故に我あり」以来、個が中心に据えられ、西洋では絶えずIを主張することになった。イギリスの有名なロマン派の詩人ワーズワースの水仙を歌った詩も、「I wonder lonely as a cloud(雲のようにさまよった)」から始まるように、英文学においては、Iが必ず詩の中心になる。雲のようにさまようI の気持ちに読者が共感することで初めて詩が成り立ち、詩が始まっていくのである。

私もこの「Iがない」ことがありえない文化の中で育ってきた。そのため、最初にこの歌を英訳した際にもI を補った。しかし、この歌の背景に、自分がこれまで馴染(なじ)んできたのとは違う文化と、人間に対する考えがあることに気がついた。そこで再訳したときには、この歌が主語を主張しない顕著な例であることがわかるように、どちらにも読み取ることができるような、もとの歌に近い訳を試みた。



人間に対する捉え方の違いは、自然との関わり方の違いにも直結している。西洋の詩において、人というのは自然と対立し眺めている主体である。それに対し、和歌においては、人も自然と一体化している。和歌はI を主張しなくても成立するのである。この歌もそうした例の一つで、英訳することで日本人の文化的特徴でもある自然と人間の近しさがくっきり浮かび上がったように想う。

未曾有のパンデミックや、自然破壊、地球温暖化などをめぐり、現代では、人間と自然とが対立的に捉えたれることが多い。しかし、だからこそ日本の古典の中に息づく、人間も自然の中の一部という考え方が、今の世界に必要なのではないだろうか。



詠み人  猿丸太夫

さるまるだいふ 伝承の歌人。実在したかどうかも含め、詳しい人物像は不明。多くのよみ人知らず歌を集めた古歌集「猿丸集」がある。「だゆう」とも読む。


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