「たそがれ清兵衛 (藤沢周平)」 続き (3-4)
清兵衛は、出来上がった飯の支度を、茶の間にはこび、妻女に喰わせながら自分も飯を喰う。
「おまえさま、今夜の豆腐汁は味がようござりますこと」
「うむ」
「食事の支度も、だんだんと手が上がるものと見えますな。申しわけござりませぬ」
「......」
食事の後始末が済むと、清兵衛は外に出て、同僚の小寺辰平の妻女から、内職の材料を受け取って来る。内職は虫籠つくりである。
清兵衛は内職の品を茶の間と寝部屋の境い目のところにはこび、妻女の話相手になりながら手を動かす。と言っても、話しかけるのはほとんどが妻女の方からで、清兵衛は時おり返事を返すだけである。一日中城に勤めている清兵衛よりも、寝ながら外の声を聞いている妻女の方が世間を知っていた。
試訳
Seibê dresse la table du repas et en aidant sa femmer dîner il dîne lui-même.
― Mon cher, cette soupe de «tôfu» me semble remarquablement meilleure aujourd'hui.
― Mangez beaucoup.
― Je suis convaincue que la pratique rend parfait. Désolée.
― ......
Après avoir fait la vaisselle Seibê sort à sa voisine, la femme de Tappei Kodera son camarade. On consigne à elle les matières du travail à domicile qui et la fabrique des cages d'insectes qu'il , comme
Il met des matières et les outils au seuil entre la salle de séjout et la chambre et travaille en s'entretenant avec sa femme. Elle offre la plupart des sujets auxquels il répond de temps en temps. Elle est mieux au courant du monde que lui dont la journée est passé dans le bureau du chateau.
これで、第 3 章の前半が終り、11/22 の一節に続く (連番は振り直しました)。
第 4 章では、清兵衛は筆頭家老を上意討ちで殺害する計画に加担するよう迫られ、妻女の治療の援助はするからといわれて、やむなく引き受けることになる。
第 5 章では、重役会議になかなか姿をみせない清兵衛に、杉山が「一藩の浮沈がかかっているというのに、女房の尿(しし) の世話か、あの馬鹿が」と毒づく。かろうじて間に合った清兵衛は筆頭家老を抜き打ちに切り捨てる。
第 6 章 (最終章) は、鶴の木湯で療養する奈美と、見舞いに訪れた清兵衛の、
「おまえさま、雪が降るまでには、すっかり元気になるかも知れませんよ。はやく、ご飯の支度をしてさし上げたい」
「無理をすることはない。じっくり様子をみることだ」
と清兵衛は言った。道が濡れてぬかるんでいるところがあったので、清兵衛は妻女の手をとって、その場所を渡した。小春日和の青白い光が、山麓の山に降りそそいでいる。
で終る。