おぼえた日記

2011年11月7日(月)

profile の画像 (接吻, A. Rodin) が日々恥ずかしいので、10/27 の方針を覆して、トットと取り替えることにする。
この不幸な恋人たちにお別れをいう前に、「神曲、地獄篇」の 127 - 138 をン十年ぶりに再読しておこう。一切合財を忘れ去ってしまっているなかで、「その日、私たちがその本を読みすすめることはありませんでした」の一行だけを覚えている。余程、強烈に刷り込まれたらしい。ちなみに「私から永遠(とわ)に離れることのない、この人は」は、「私とこの人は地獄に落された今も、そして、未来永劫、決して離れません」 の意思未来で読みたい。

和訳: https://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/mfujitani16.pdf
127 ある日のこと、私たちは慰みにランスロットの物語を、
どのように愛が彼を捕らえたかについて、読んでおりました、
二人きり、どんな危惧も抱かずに。
130 読み進むうち、その物語に誘われて、幾度となく私たちは
眼と眼を交わし、そのたびに、顔色を変えましたが、
あの刹那、ただあの一節が私たちを打ち負かしてしまったのです。
133 恋人が、かくも深く愛し、かくも長く焦がれた、あの
笑(え)みこぼれる唇に、口づけする条(くだり)を読んだとき、
私から永遠(とわ)に離れることのない、この人は
136 ふるえつつ私の唇に接吻(くちづけ)したのです。
その本とその本の作者がガレオットでございました。
その日、私たちは、もうそれ以上、先を読みませんでした。

仏訳: http://www.iznogood-factory.org/pub/culture/Enfer_de_Dante.pdf
127 Nous lisions un jour, dans un doux loisir, comment l'amour vainquit Lancelot. J' étais seule avec mon amant, et nous étions sans défiance :
130 plus d'une fois, nos visages pâlirent et nos yeux troublés se rencontrèrent ; mais un seul instant nous perdit tous deux.
133 Lorsqu'enfin l'heureux Lancelot cueille le baiser désiré, alors celui qui ne me sera plus ravi
136 colla sur ma bouche ses lèvres tremblantes, et nous laissâmes échapper ce livre par qui nous fut révélé le mystère d'amour.

独訳: http://de.wikisource.org/wiki/G%C3%B6ttliche_Kom%C3%B6die_%28Streckfu%C3%9F_1876%29/Inferno
127 Wir lasen einst, weil’s Beiden Kurzweil machte,
Von Lancelot, wie ihn die Lieb’ umschlang.
Wir waren einsam, ferne vom Verdachte.
130 Das Buch regt’ in uns auf des Herzens Drang,
Trieb unsre Blick’ und macht’ uns oft erblassen,
Doch eine Stelle war’s, die uns bezwang.
133 Als wir von dem ersehnten Lächeln lasen,
Auf das den Mund gedrückt der Buhle hehr,
Da naht’ Er, der mich nimmer wird verlassen,
136 Da küßte zitternd meinen Mund auch Er. --
Ein Kuppler war das Buch, und der’s verfaßte --
An jenem Tage lasen wir nicht mehr.

「伊太利亜語いいな、できたらいいな、」 馬鹿が何か言っています。

otama さん
和訳の良いサイトを紹介してくださいました。題名が鴎外の訳だったとは!ちくま文庫の鴎外全集を持っているのですが『神曲』はなかったので気がつきませんでした。ilyaさん引用部分のパオロとフランチェスカについても、漱石の『行人』で知っていただけです。(主人公の一郎が妻と弟の関係を勘ぐって「お前パオロとフランチェスカの名前が人に覚えられていて肝心の夫の名を誰も覚えてないのはなぜか知ってるか」と言いはじめる部分。)ilyaさんの日記ではフランス語は分からないながらも色んなことを教えられます!
2011年11月11日 10時51分
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