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Molière の « Le Misanthrope (人間嫌い、厭世家) » 1 幕, 2 場から : 自作の詩をほめてもらいたいがために、友情を取り結ぼうと申し出る Oronte に対する Alceste (主人公) の答え。
ALCESTE
Monsieur, c’est trop d’honneur que vous me voulez faire ;
Mais l’amitié demande un peu plus de mystère,
Et c’est, assurément, en profaner le nom,
Que de vouloir le mettre à toute occasion.
Avec lumière et choix, cette union veut naître,
Avant que nous lier, il faut nous mieux connaître ;
Et nous pourrions avoir telles complexions,
Que tous deux, du marché, nous nous repentirions.
Monsieur, そう願っていただけるのは大変光栄なことです。
しかし、 l’amitié (友情) には、un peu plus de mystère (神秘に似たもの) が必要なのですよ。
あらゆる機会をとらえて友だちになろうという、
それが友情の名を冒涜するものだというのは、確かなことです。
lumière (その人に関する充分な知識) と選好から、この union (結合) は生まれるのです。
友情を取り結ぶ前に、よく知り合うことが肝要です。
だって、私たちの complexions (体質、気質) たるや、
二人が二人とも、(後になって) この du marché (取引) を悔やむ、そのようなものだということもあり得ることですから。
何をそう堅苦しく考えるのか。それが正論であるにしてももう少し融通をきかせればいいのに、と普通の観客は考えるのだろうか。
頭ではそう判断できても、実際生活ではそのようにはふるまえないことを自覚している普通でない観客からすれば、 « Le Misanthrope » はあまりにも身につまされて、依然として傑作ではあるにしても、もはや喜劇とは呼べないものとなってしまわないだろうか。
E. Minkowski のいう「la perte du contact vital avec la réalité (現実との生きた接触を喪失)」した人間、R. D. Laing のいう 「Such a person is not able to experience himself 'together with' others or 'at home in' the world, (他者と «ともに» ある存在として生きることができないし、世界のなかで «くつろぐ» こともできない)」といった人間は確かに存在していて、 彼はこだわりなく自然に生きているように見える他者を絶望的な妬みをもって、睨めつけているのである。
そのような人々のために « Le Misanthrope » は書かれたのだとは言わない。
ただ、そのような人々への目配り (決して冷笑的ではない) はあって、それがこの戯曲に奥行きを与えているという感じはする。