25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 1 |
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 |
23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 |
30 | 31 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
09/30 の「感情教育」の出会いの場面の訳を生島遼一さんのそれで引用しておきます (私自身の日本語の勉強のために)。
<quote>
とそれは一つ幻のようであった。
彼女は腰掛けのまんなかに一人でかけていた。少なくとも、青年の眼をうったまぶしさに、ほかの人間は見分けられなかったのだ。彼が通るとき、女はひょいと顔をあげた。彼はもう無意識に肩をかがめた。そして、少し離れて、同じ側にいってから、はじめて女のほうに眼をそそいだ。
女は幅の広い麦藁帽子をかぶり、そのばら色のリボンが風にゆれて背になびいていた。編んだ黒い髪が長い眉のはしをふちどり、ずっと低くたれて、うりざね顔をやさしく押さえているようにみえた。明るい水玉模様の紗の着物が幾つものひだになってまわりにひろがっている。何か刺繍をしていた。筋の通った鼻、顎、その全身が空色の背景のなかにくっきりと浮かび上がっている。
...
今までに、これほどの小麦色した肌のつや、胴あいのうつくしさ、陽にすきとおって見える指のしなやかさを、見たことがなかった。青年は女の裁縫籠を何か不思議なものでも見るように、呆然と眺めていた。なんというひとだろう。住所は、身の上は、その過去は。彼はこの女のいる部屋の家具、今まで身につけた衣裳、つきあった人、みんなを知りたい心地がした。そして、肉体的にわがものとしたい欲望さえ、それよりももっと深い望み、果てしのない、苦しいほどの好奇心のなかに消えてしまっていた。
</quote>
書き写していて、この程度ものだったんだろうかとの、ないものねだり的な désillusion を感じています。