あとがきめいたこと。
私は想像力が欠落した人間で、ツオエ・グラデイーヴアが、長さが不揃ひな両脚といふ障害をかかへた娘だといふことに、随分後になるまで気づきませんでした (フロイトも何故か、そのことには触れてゐないし)。
跛行の女、魔性の女、運命の女。ジヨゼフイーヌ・ド・テムニンク、リーザ・ホフラコワ、シンデレラ、クララ・ゼーゼマン、メデユーサ。
ここで反省の弁。
和訳でツオエの台詞を「用意ができていなかったのですは」のやうに表記してきた。
副助詞と考へるのか係助詞と考へるのか知らないけれど、「こんにちは」と表記するのであれば、係助詞の結びの消滅から派生した終助詞の「は」も同じだらうと考へてゐたからである。
調べてみたら「現代仮名遣い (昭和 61 年内閣告示第 1 号)」に
<quote>
2 助詞の「は」は,「は」と書く。
例 ...
これはこれは こんにちは こんばんは
悪天候もものかは
〔注意〕 次のようなものは,この例にあたらないものとする。
いまわの際 すわ一大事
雨も降るわ風も吹くわ 来るわ来るわ きれいだわ
</quote>
とある。
「いなかったのですわ」が国語審議会の推奨表記らしい。
「ゐなかつたのですは」で突つ張らないのであれば、「いなかったのですわ」と表記すべきだつた。 (「~ぢゃ (じゃ) ないか」など、他にもあるかも。)
Lang-8 に投稿を始めてから外国人の日本語学習者に混乱を与へない表記に気をつかふやうになつた。何事もおカミが定めた通りに。
とはいふものの、「すわ一大事」とは「怖い蟹」。