おぼえた日記

2011年12月22日(木)

«La Belle au bois dormant (眠れる森の美女)» で眠っているのは森だ。dormant であって、dormante ぢゃないだろう。といわれてそうなのかと思っていた。 (現在分詞が動詞句であるときは性数変化させさせないわけだけれど、この場合は形容詞なので。)
が、やはり眠っているのは美女らしい。代換法 (hypallage) の一種で転移修飾語と呼ばれる技法がつかわれているんだそうな。
http://fr.wikipedia.org/wiki/Hypallage、によれば、

L’hypallage est une construction où deux termes d'un même nœud syntaxique seraient incompatibles sur le plan sémantique sans l'inversion d'un des deux premiers termes avec un troisième terme in absentia, ou in praesentia dans un second noeud syntaxique. C’est un procédé d’une caractérisation non pertinente, qui attribue à un mot ce qui conviendrait logiquement à un autre.
hypallage とは、二つの語の接続に意味論的な無理がある、但し、そこに不在の、あるいは、それに続く語群中に現れる、第三の語と語順をひっくり返すせば意味が通じるようになる文の構成をいう。ある語に論理的には他の語に与えるべき機能を担わせるのだから、適切な言語使用とはいえない。 (in absentia、in praesentia は多分 F. Saussure の思想圏に属する言葉。)

何か頭が痛くなってくるような文章だが、次の Gray の例を見れば、何が言いたいのかは一目瞭然。

例 (hypallage simple):
■ « The ploughman homeward plods his weary way, / And leaves the world to darkness and to me » ― Thomas Gray, Elegy Written in a Country Churchyard
※ weary なのは way ではなく、ploughman。
■ « Les habitants de l'orgueilleuse Rome » ― J. Racine
※ des habitants orgueilleux de Rome が普通の言い方。

例 (hypallage double):
■ « With rainy walking in the painful field. » ― Shakespeare, Henry V
■ « Un vieil homme en or avec une montre en deuil » ― Jacques Prévert
■ « J’aspire, volupté divine ! / Hymne profond, délicieux ! / Tous les sanglots de ta poitrine. » ― Baudelaire, Madrigal triste
 「僕は吸い込む、神聖な欲望として! / 深遠で甘美な讃歌として! / 君の胸からこぼれる全ての呻き声を。」
※ la relation « volupté divine » passerait pour conventionnelle si elle n’avait un répondant avec le moins habituel « hymne profond et délicieux ». Pris isolément, les deux segments appartiennent à la métonymie. Mais, à les voir rapprochés, on lirait plus logiquement : « volupté profonde et délicieuse » et « hymne divin ». Le procédé est sous-tendu par la norme ou la logique en arrière-plan, ce que Michel Ballard nommait la « collocation »
要訳: {volupté / hymne} の二つの名詞と、{divine / profond, délicieux} の二つの形容句が 2 x 2 = 4 葉の修飾・被修飾関係にあるのだ。

ilya さん
otama さん。
貴重な情報をありがとうございました。

otama さんの頁で、露西亜文学の香気だけを嗅いでいるような錯覚を楽しませていただいています。
2011年12月22日 20時06分
otama さん
ilyaさん、こんばんは。
フランス語は分からないのですが、なんだか興味深いお話です!
さっそく露語訳を調べたのですが
   Спящая красавица(眠っている美女)
「森」はあっさり消されていました…。
2011年12月22日 19時34分
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