部分冠詞
1. 部分冠詞の形
部分冠詞は、数えられない名詞(不可算名詞)の前につきます。
数えられないため、部分冠詞には複数形は存在しません(そもそも単数と複数の区別がありません)。
男性名詞の前か、女性名詞の前か、母音で始まる名詞(男性名詞・女性名詞)の前かで、次の 3 つの形になります。
これらは定冠詞の前に de がついた形と同じです。
男性 女性 母音の前
du de la de l'
2. 部分冠詞の用法
(1)食べ物・飲み物
食べる対象・飲む対象となる場合は、「一部を食べる・一部を飲む」と捉えられるため、原則として名詞には部分冠詞をつけます。例えば、
manger du poisson (魚を食べる)
骨や内臓は食べず、魚の肉の「一部」を食べるという感覚です。
ただし、「魚」という名詞には部分冠詞がつくと決まっているわけではありません。
例えば、「水槽の中には 5 匹の魚がいる」という場合は数えられるため、「cinq poissons (5 匹の魚)」となります。
また、「私は肉より魚のほうが好きだ」という場合は「肉というもの」「魚というもの」というように「概念化」されるため、定冠詞がついて「le poisson」となります。
このように、同じ名詞でも、捉え方によって部分冠詞がついたり、他の冠詞がついたりします。
(2)感情
「感情」を表す名詞にも、よく部分冠詞がつきます。
Elle a éprouvé de la joie. (彼女は喜びを抱いた)
「a」は助動詞 avoir の現在(3人称単数)。「éprouvé」は他動詞「éprouver ( [感情を] 抱く)」の過去分詞(p.p.)。「avoir + p.p.」で複合過去になっています。「joie」は女性名詞で「喜び」。なお、「éprouvé」の後ろに「de」がありますが、「éprouver」は「de」と一緒に使う動詞(=「de」を伴う間接他動詞)ではありません。この文は、「Elle (彼女は)」が主語(S)、「a éprouvé (抱いた)」が動詞(V)、「de la joie (喜びを)」が直接目的(OD)の第3文型で、「de」は部分冠詞の一部です。
この「joie (喜び)」という名詞も、捉え方によっては他の冠詞がつきます。例えば、
une grande joie (大きな喜び)
これは、「どのような喜びか」という、「喜びの種類」を表しています。「一つの種類」として捉えられるため、不定冠詞がつきます。
このように、一般に形容詞がつくと不定冠詞がつきやすいという傾向があります。
(3)その他
Le temps, c'est de l'argent. (時は金なり)
英語の諺 Time is money. のフランス語訳です。
「temps」は男性名詞で「時」「時間」、「c'est」は「それは~だ」。細かく言うと、「Le temps」の部分は文頭に飛び出て(=遊離して)おり、それを代名詞「c'」で受け直しています。「argent (お金)」は男性名詞で、部分冠詞がついています。
「c'」が主語(S)、「est」が動詞(V)、「de l'argent」が属詞(C)の第2文型です。
英語だと Time も money も無冠詞ですが、フランス語にすると冠詞が必要です。
「時間」は「時間というもの」と概念化されているため定冠詞がついており、「お金」は数えられないもの(不可算名詞)として捉えられています。