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人生まだ半分、37才からの外国語
d-mate

英会話教室や雑誌、ネットなど、ごく普通の環境だけで始められ、続けられる外国語学習の記録と秘訣を伝えていこうと思っています。
 

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人生まだ半分、37才からの外国語

2009年12月 1日 (火)

英語の歴史に親しむ2冊
英語ってどうして
中学の頃からずっと疑問だったのですが、英語はなぜ書いてあるスペルのとおりに読まないのでしょう。しかも、読みにルールがあるようでいて、すべてが同じルールに則っているわけでもないし。
ドイツ語やイタリア語は、名詞の性やら格変化やら、英語に比べてややこしい要素があるのもたしかなのですが、こと読みに関してはかなりの部分が一定のルールに従っています。なので、全く意味がわからなくても声に出して読み上げることは可能です。

なぜ英語はこうなってしまったのか、その理由のひとつが英国の歴史にあります。
もともとケルト系の人々が住んでいたブリテン島に、まずアングル族やサクソン族といったゲルマン民族が移住します。当時のゲルマンの言葉をもとに古英語が成立します。
そこへ11世紀のノルマン人による征服王朝が成立し、フランス語が流入、さらにはラテン語からの語彙の流入もあって、英語はひとつの意味を表すにも複数の異なるルーツを持つ単語があり、スペルと読みが一致しない、世にも複雑な言語となってしまった...というわけ(きちんとした周辺知識を持たない私がざっくりとまとめたので、誤解や間違いがあるかもしれませんが)。
冒頭の疑問にはとりあえずこんな背景があったようです。

こうした事情を知ったのが、昨年読んだ本「英語の歴史」(寺澤盾著・中公新書)でした。
レシートが挟んであったのですが、ちょうど1年前の10月末に購入し、読んだもののようでした。そういえば、このブログを書き始めた頃に「そのうちネタに使おう」と思っていた記憶があります。

英語の歴史
「過去から未来への物語」という副題のついたこの本は、英語という言葉の歴史と現在、そして未来について非常にコンパクトに、しかも読みやすくまとまったものです。

お堅い歴史の話ばかりではなく、英語表現にまつわるさまざまな疑問やPC表現のような最近の話題まで、幅広く雑学的に読めます。
したがって言語学や英国史についての基礎知識がなくても、読み進めるのにほとんど問題はありません。まあ、興味があることは、重要ですけど。

そしてもう一冊、先月読み終えたのが「英語文化を知るための15章」(武内信一著・研究社)です。
こちらは大学での講義テキストを元にして書かれたものなので、「英語の歴史」よりはぐっとアカデミックになります。

英語文化を知るための15章
アカデミックとはいっても、こちらも素人お断りの難解なものではありません。
英語の成り立ちや歴史、英語による文学の歴史に関心があれば、ほとんど退屈せずに読むことができるでしょう。

この本を読むと、言語というものがきわめて政治的にも重要な意味合いをもつことが理解できます。
王権が代わるたびに、その正統性を示すために歴史が掘り起こされ、民族的なルーツと宗教面でのルーツとに矛盾があっても、権力は平然とそれらを利用し、結果として言語が影響を受け変化します。その変化の積み重ねがいまの英語の姿でもあるわけです。

「ベオウルフ」の文章などを読んでみると、現代のドイツ語との共通点の大きさに驚きますし、「カンタベリー物語」あたりになるとかなり英語っぽさが出てきます。
一見してわからなくても、訳文を読んでから戻ると「あ、あの単語か!」と気づくこともあって、ちょっとした暗号解読の気分も味わえます。
本文210ページの薄いものですが、じっくりと読み進めるとけっこうな時間を楽しむことができます。もちろん、一度ではなかなか頭の中で整理できませんから、二度三度と読み返して楽しめるでしょう。

いつもいつも「勉強」「目標」「努力」みたいな状況で英語とつきあっていては疲れちゃいますから、時にはこんな本を読んで、学習とは別の方法で英語と親しくなるのも、良いんじゃないでしょうか。

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シュタイントギル:

読んでみました。「英語の歴史」、「英語文化を知るための15章」ともに気楽に読めるものですね。
 ところで、低地と高地のドイツ語があったのに、高地のものを選択し、バイエルンやザクセンの訛りを切り捨てていったというドイツ語の言語統合の歴史と比較して、様々な言語要素を取り込んでいった英語という構図もありそうです。詩を書くなら単語の位置が自由な語尾変化の豊かな言語のほうが良さそうですが、構文を固定化したことで、英語は語尾変化をなくしてしまいました。これが実用言語としての地位確立に貢献したのでしょうね。そのかわり、文化的要素を犠牲にしているのではないかと思います。それが、文化の分野では、いまだにフランス語やドイツ語が重要である所以なのでしょう。
 ちなみにイタリア語も16世紀頃はフィレンツェ地方の言語に過ぎず、19世紀ではまだ統一言語ではなかったとか。

d-mate Author Profile Page:

言語の歴史というのは、単にどの言葉が優れていたからということではなく、政治や文化、あるいはその時々の国際関係などの要素が絡み合っていて、歴史を裏側から眺めているようなおもしろさがあります。
 ドイツ語がいまの形になってきた経過も、いろいろと調べてみると興味深そうです。英語の次はドイツ語の歴史について読んでみようかと思ってます。
 またドイツ語で言えば、スエーデンやノルウェイなど北欧の言語との関わりや文化的な共通性なんかも、さまざまに研究されているようですから、いくらでも楽しめる分野がありそう。
 国民国家が成立する過程というのは、地域間の多様性や差異を排除して子かkとしての統一性を求める課程でもあったわけで、ゆっくりと変化してきた言語を人為的にまとめ上げていく流れもまた、興味深いものがあります。英語の歴史なでは、百年戦争を経て英国がフランスから離れていく課程は何度読んでも、ダイナミズムにあふれていますね。