2010年11月 9日 (火)
Nouveau, Novello, Neue
11月といえば バブル期のようなバカ騒ぎこそなくなりましたが、逆に定着したといえそうなのが11月の第3木曜日、その年の新酒を味わう「Beaujolais nouveau」です。 1000円台のテーブルワインでも十分においしいものが選べるのに、だいたい一本あたり3000円前後にもなるボージョレー・ヌーヴォーは、酒販業界にとっても稼ぎ時なのでしょう。 もっとも最近では、酒屋だけでなくスーパーマーケットやコンビニでも予約販売されていて、しかも月末になると売れ残りが割引価格で投げ売りされていて、盛りを過ぎたはやりものの寂しさも感じさせます。 昨年旅行中に参加したワインセミナーで、「世界で一番熱狂的にボージョレー・ヌーヴォーをありがたがっているのはどこの国でしょう?」というクイズが出され、答えはもちろん日本でした。 もともとはワインのできばえのチェック程度の役割だったボージョレー・ヌーヴォーが、地球の裏側で「初物」を珍重する国民性に見事にマッチして大ヒットしたのは、ボージョレー地方の人たちにとっても驚きだったでしょうね。 我が家はNovello 毎年お祭りなので、我が家でもボージョレー・ヌーヴォーはなんだかんだと不満を言いながらも買って飲んでいます。 でも、もともと重めのワインが好きなので、だいたいは「ま、ヌーヴォーはこういうものだよね」程度でおしまい。3000円出せばもっとおいしいワインがいくらでもあるのにな、という思いは消えません。 そこで同じお祭りでも味を伴って楽しめるのが、イタリアの新酒である「Novello」です。 ボージョレー・ヌーヴォーが赤ワインならガメイ種のブドウに限られているのとは違って、ノヴェッロは単に「新酒」という意味合いで、さまざまな味わいのものが選べます。 先週の土曜日には販売が開始されていたらしいのですが、我が家ではようやく今日になって購入、ハムステーキをお供に楽しみました。 ボージョレー・ヌーヴォーと違って、そこらのお店で簡単に買えるというわけではなく、けっこうワインの品揃えに力を入れている百貨店でも取り扱いのないケースが多いです。このため、「ノヴェッロなんて知らないよ」というかたも多いでしょう。 今年もけっこう探すのに苦労して、結局は毎年何種類ものノヴェッロを売っている酒屋で買うことができました。 ドイツにも! さて、イタリアやフランスにもあるのですから、ドイツにだって新酒はあります。その名は「Der Neue」。まあ、「新しい」という形容詞から派生しているのは同じですね。 残念なことに、これはまだ飲んだことがありません。ドイツのワインは白が中心で、重めの赤ワインが好きな我が家ではなかなか購入する機会がないのです。たまに買っても、結局は好みじゃなくてパーティかなにかに持っていって人に飲ませたり(けっこう好評なんですけどね)。 日本人の「初物」への思い入れはときとして過剰をさえ超えるとも思われます。 たしか、落語で一日中売れ残って傷んだ初鰹を無理して食べる噺があったようにも記憶していますが、「初物をいただくと寿命が延びる」なんて親から聞かされたこともあって、私もけっこう喜んで食べ、飲むほうです。 しかし、「ボージョレー・ヌーヴォー」「ノヴェッロ」「デア・ノイエ」なんていうところを見ると、ヨーロッパの人たちだって「新酒」とか「初物」には心ときめくのではないのかな。 収穫の秋を終えて長い冬を迎えるこの時期に、その年の成果を確かめ、大地の恵みに感謝する気持ちは、洋の東西を問わないのかもしれません。 |