プロフィール

人生まだ半分、37才からの外国語
d-mate

英会話教室や雑誌、ネットなど、ごく普通の環境だけで始められ、続けられる外国語学習の記録と秘訣を伝えていこうと思っています。
 

サイト内検索


人生まだ半分、37才からの外国語

2011年7月16日 (土)

Oyster, Auster
世界は私の牡蠣
シェークスピアの作品、「ウィンザーの陽気な女房たち/The Merry Wives of Windsor」の一説に、「The world is mine oyster.」という一節があります。
主人に金を無心して断られたチンピラが、ならば剣に物言わせて、あたかも貝をこじ開けて真珠を取り去るように奪い取ってやろうかとすごむ場面です。ここから、「世界を意のままにする」という意味になるのだとか。
ちなみにこの台詞は東京ディズニーシーのとあるアトラクションにも掲げられています。

さて今日はちょっと早めの夕食で牡蠣を食べてきました。
実は、数年前の年末に焼き牡蠣をおいしくいただいた直後に強烈な腹痛でお正月を棒に振って以来、生牡蠣であろうとフライであろうと、食べると必ずおなかの調子がちょっと狂います。それでもおいしいので食べるのですが、これは心理的なものなのでしょうか。
これを書いているいまも、ちょっとおなかが重たく感じます。

この季節に食べられるのは岩牡蠣ですが、今年は残念なことに三陸の牡蠣を楽しむことはできません。
今日のお店では、特定のワインを一本注文すると、漁船を購入するための資金として寄付ができるというので、白ワインをいただきました。ただ、寄付は一本あたり100円とのこと。もうちょっと高くしても良いので、500円か1000円くらいの寄付で良いですよ、と思わないでもありませんが、それだと売れなくなっちゃうのか。

Eusterじゃなかった
さて、英語で「Oyster」なんだから、ドイツ語ではきっと「Euster」なんだろうと思いきや、ちょっと違っていて「Auster」でした。
辞書に掲載されている例文は「eine Auster aufbrechen」で「カキの殻をこじ開ける」とのこと。やはり牡蠣の殻は刃物を使ってこじ開けるものなのでしょう。レストランでは、すでに開けられたものをするりと食べるだけなんですけどね。

生の牡蠣をこじ開けるのは、「意のままに」というほど簡単ではないようにも思えます。
牡蠣とは違いますが、ホタテを捌くのだってけっこう大変で、素手でやっていると指先に小さな傷をたくさんつくったりしますね。牡蠣だって貝柱を切らないと開けられないのは一緒のはずなので、おそらく似たようなものでしょう。
それでも、「The world is mine oyster.」という表現が出てくるからには、ナイフを使えば造作もないことなのでしょうね。

調べるついでに、シェイクスピアの文がドイツ語にはどう訳されているかというと、こんなのが見つかりました。
「Dann ist die Welt mein' Auster, Die ich mit Schwert will öffnen.」
まんま訳しただけ、という感じです。ドイツ語で「Die Welt ist meine Auster.」といったときに、「世界はわが意のままに」なんていう意味があるのかどうかはすぐには調べがつきませんでした。

最後に笑うものが
この「ウィンザーの陽気な女房たち」は、ジュゼッペ・ヴェルディの最後の作品である「ファルスタッフ」の原作であることもよく知られています。
残念ながら、ヴェルディのオペラには冒頭の牡蠣の一説は登場しません。徹頭徹尾身勝手で自己陶酔甚だしい騎士ファルスタッフが、ちょっかいを出した女性たちにとっちめられつつも、最後は全員が笑って終わるこの作品は、数少ない喜劇オペラの傑作です。

世の中はすべて冗談、人はみないかさま師、最後に笑うものが本当に笑うもの、というラストの合唱を聴くたびに、ポジティブな許しの力強さが心にしみいる作品です。
復讐といっても相手を破滅させるものではなく、だましたものとだまされたものとがお互いに肩を抱いて生の喜びを歌うこの作品を人生の最後に残せたのですから、ヴェルディという人は苦難はあっても幸せな人生を送った人だったのだと思います。
カテゴリー:ドイツ語  | 前のエントリー  | 次のエントリー