
2010年2月 9日 (火)
好きな歌で覚える外国語
ビートルズ? それともカーペンターズ? ...なんて、例に出すミュージシャンが古すぎますか? でも、英語の聞き取りを考えると、あまり最近のものは不向きなものが多いようにも思います。目的にもよりますが、ヒップポップなんかで英語を覚えちゃうのは問題が多い気もしますし。 まあ、マイケル・ジャクソンでも良いのですが、とにかく自分の好きな音楽の歌詞を通じて外国語に親しむというのは、比較的多くのかたにとって「勉強している」という感覚を持たずに続けられるものでしょう。 私が中学校の頃は、なんといってもスウェーデンのスーパースター「ABBA」でしたね。 英語が彼女らにとっても外国語だったからでしょうか、比較的聞き取りやすく、それでいてストレートに好きよ嫌いよではなく、「ワーテルローの古戦場」なんかが突然出てきたりでおもしろさもありました(「Waterloo」ですね)。 でも、ドイツ語なのだ で、今回はそんな「好きな歌」の歌詞を読んでみようと思うのですが、選んだ曲は、たぶんご存じないかたのほうが多いかも、です。 19世紀末から20世紀初頭にかけて指揮者として活躍し、いまや世界中でこの人の曲が演奏されない日はないのではないか? というほどの人気を誇る作曲家、グスタフ・マーラー(Gustav Mahler)の交響曲第2番ハ短調「復活」です。 この曲は5つの楽章からなる、全部で80分内外を要する長大な曲です。 私は、たしか中学2年生の頃にNHKのFM放送でこの曲を聴き、まさに一発でノックアウトされました。それまでに聴いてきたどんな音楽とも違う、気高く荘厳なものと卑俗で日常的なものとがごちゃ混ぜになった、しかし終盤にかけて大きな祈りのうねりが押し寄せてくる演奏に圧倒されたのです。 以来、この曲は私の中で不動の位置を占め続けています。FMで録音した音源も含めて、いま私のiPodには実に36種類の「復活」が入っています。 こんな記事も書いたことがあります。よろしければどうぞ。 記憶なんてアテにならないもの ~ 初めて聞いたマーラー2番は、シカゴじゃなくロンドン(d-mate weblog) さて、その歌詞は 第4楽章でのアルト(あるいはメゾソプラノ)独唱のあとで、アルト・ソプラノの独唱者と男女合唱とが加わりますが、次にあげるのはその最終盤の歌詞です。 クロプシュトックの賛歌「復活」によるもの(一部をマーラーが変更)。 Mit Flügeln, die ich mir errungen Werde ich entschweben. Sterben werd ich, um zu leben! Auferstehn, ja auferstehn wirst du, mein Herz, in einem Nu! Was du geschlagen, zu Gott wird es dich tragen! では、読んでみましょう。 Mit Flügeln, die ich mir errungen, werde ich entschweben. 「Flügel」は「翼」、次のdie以下がFlügelを修飾しています「erringen」は「勝ち取る」なので、「私が勝ち取った翼で」「werden」を使っているので未来形ですね、「私は漂い去るだろう」あるいは「私はこの世を去るだろう」 Sterben werd ich, um zu leben! 普通は枠構造で最後にくる動詞が先頭に出てきていますね、「私は死ぬだろう」 「um zu〜」があるので、「生きるために」ですから「生きるために、私は死ぬだろう」、この部分だけだとよくわかりませんが、要は死んでのちに永遠の生命を得る、という意味での「復活」を歌っています。 Auferstehn, ja auferstehn wirst du, mein Herz, in einem Nu! これも動詞の原形が先頭に出てきています。「Auferstehn」は語調を整えるために語尾のeを抜いていますが、「復活する」という動詞。「君はよみがえるだろう」。 「mein Herz」は「du」の同格の言い換えですね、「私の心」。「in einem Nu」は「ただちに」ですから、前半部とあわせて「私の心よ、いまただちに君はよみがえるだろう」。 Was du geschlagen, zu Gott wird es dich tragen! 前半がわかりにくいですね、「Was」は関係詞でしょうが、「du geschlagen」では動詞がありません。「打ち負かされた君が」とでもなるのでしょうか。 後半のesが、前半のWas以下を意味する主語でしょうから、「打ち負かされた君が、君自身を神のもとへと運んでいくだろう」てなことですね。 結局あわせると、こんなふうになります。 「私が勝ち取った翼で、私はこの世を去る 生きるために、私は死ぬだろう よみがえる、よみがえるだろう、私の心よただちに 打ち負かされたものが、おまえを神のもとへと運ぶだろう」 やっぱりちゃんと最初から読んでいかないと、よくわかりませんね。やっぱり詩なので、単純に訳しても何の味わいもないし、そもそもきちんと意味もとれません。ちなみに、Wikipediaのこの曲の項目に、訳が掲載されていますから、一度読んでみてください。 さて、このマーラーは、1860年生まれで1911年に亡くなっています。 つまり、今年は生誕150周年で来年が死後100年ということになります。来年にかけてかなり多くのコンサートでこの作曲家の作品を取り上げられますし、全集もののCDの廉価再発売などもあって(私はほとんど持っているので、あまりうれしくない)、マーラー・イヤーはそれなりの盛り上がりを見せています。 この交響曲第2番「復活」、ちと長いので忍耐が必要ですが、最後にはほぼ必ず感動できる曲ですので、一度機会があったらお試しください。宗教臭さもほとんどありませんから。 |
ロシア民謡やドイツ歌曲、私もd-mateさんのように好きな歌で覚える外国語派です。もっとも、ロシア語は、少年時代に「ともしび」や「トロイカ」をカタカナ表記を見て口ずさんでいたものの、語学としては、昨年の4月から始めたばかりです。正直言ってマーラーはあまり聴いたことがなかったのですが、じっくりと楽しめそうですね。
歌と言えば、イタリア語はオペラのこともあって、教材が豊富です。4月には新国立劇場で「愛の妙薬」が上演されるので、昨年のアンコールイタリア語講座のテキストを復習しておかなくては・・・。
投稿者: シュタイントギル | 2010年2月12日 00:01
日時: 2010年2月12日 00:01
「愛の妙薬」いいですね。もちろん、我が家では安いボルドーワインのことは「妙薬」と呼んで珍重しています。アンナ・ネトレプコも最近ではスター気取りが鼻につきますが、少し前はアディーナがよく似合っていました。ヴィラゾンやダルカンジェロと共演したDVDはお気に入りのひとつです。
マーラーの「復活」、「のだめカンタービレ」でも千秋真一が5楽章のアルト独唱の部分を酔っぱらいながら歌っていました。やはり人気曲のようで、たまにコンサートで取り上げられるとすぐに売り切れてしまいます。好きな曲だけに、CDも含めてなかなか「これ」という演奏には行き当たらないのですが…
投稿者: d-mate
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2010年2月14日 10:39
日時: 2010年2月14日 10:39