2013年5月29日 (水)
The bucket list
なぜバケツを蹴ると死んじゃうのか? 「The bucket list」は、2007年の映画タイトルとして広く知られています。邦題は「最高の人生の見つけ方」。 現代の「The bucket list」は、死ぬまでにやりたいことがらのリストを意味しているのですが、それほど以前から使われていた表現ではないようです。 もともと、「Kick the bucket/バケツを蹴飛ばす」で「死ぬ」という意味があり、そこから「The list of things to do before we kick the bucket」つまり「死ぬ前にやっておきたいことのリスト」が「The bucket list」になったと。 そもそもこの作品での造語なのか、映画の評判が高かったので一気に使われ出したのかはわかりませんが、WEBで見つけられるほとんどの解説では、この映画のタイトルから、「The bucket list」という言葉が使われるようになった、といったものになっています。 さて、ではどうしてバケツを蹴飛ばすと死んじゃうんでしょうか。 バケツを蹴飛ばすと足に小さなキズができて、そのキズの治療のために絆創膏が必要になり、絆創膏が売り切れると...といった具合に話がつながると面白いのですが、そう簡単に桶屋は儲かりません。 私が見つけた語源は、「首をくくるためにバケツの上に立ち、ロープを首にかけたあとでバケツを蹴飛ばす」=「死ぬ」というものでした。なるほど、たしかにバケツを蹴ったら死んじゃいます。 Alaskan cruise is on the bucket list 昨年の夏休みに、北米のシアトルを発着するアラスカへのクルーズ船に乗ったときのこと。 下船後に空港近くでの宿泊先からシアトルの市街地へ食事と観光のために移動中、アメリカ人男性と日本人女性のカップルと一緒になり、では食事でも、という話がまとまりました。 移動中の鉄道社内から食事まで、けっこうな長時間の英会話雑談実践になりましたので、話題も多岐にわたったのですが、終わったばかりのアラスカクルーズについて、この「Bucket list」が登場しました。 彼曰く、「The Alaskan cruise has been on our bucket list.」だったんだそうで、ついにリストのひとつを片付けたんだと。 私はこの「The bucket list」なる表現を知らなかったのですが、「ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが出た映画があって...」という説明を受けてようやくこの作品に思い至り、意味が通じたのでした。 でも君には「Bucket list」はあるかと質問を受けて、私ははたと考え込みましたね。実際のところ、まだ自分の死期を間近には感じたことがありませんでしたから。 この会話から9ヶ月が経ちましたが、実のところ、まだ私は「Bucket list」を作ってはいません。行ってみたい旅行先だけをあげていっても、おそらくは長大なリストになるでしょうし、やりたいことはそれだけではありません。 きっと、途中までしかできあがっていないリストを見て、人生がどれほど長くてもリストの半分も消化できないことがはっきりとするだけで、結局はストレスを増やしてしまう結果を招くかも。 残ったのは、語彙だけ? 結局リストも作らず仕舞いだったわけですし、また、数時間にも及ぶ会話で私の英語コミュニケーション力が大幅に向上したわけでもありません。 おそらく、会話終了の瞬間が、この1年間の私の英語力のピークだったことはまちがいないのですが、それ以来、ほぼ英語使ってませんから。 それでも、「The bucket list」なる言葉と概念は、一生忘れないでしょう。たぶん、わりと苦労せずに使える表現にひとつとして、身には付いたと思います。 もしかすると、この表現が本当にヒット映画によって産み出されたものだとすると、堅い場所で使うには不適なのかもしれません。まあ、堅い場所でしゃべることになり、そのとき使いたくなったときに考えましょう。 やはり言葉というのは実際に使いながら習得するのが、最も記憶にも強く刻まれ、忘れにくいものだというのは実感できます。 得たものが結局は、この表現だけだったというのは、私の学習能力の低さを証明していますが、きっともっと柔軟な記憶力や応用力があれば、数時間の会話から得られるものは非常に多かったでしょう。せめてもうちょっと若いころだったらなあ... |