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人生まだ半分、37才からの外国語
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英会話教室や雑誌、ネットなど、ごく普通の環境だけで始められ、続けられる外国語学習の記録と秘訣を伝えていこうと思っています。
 

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人生まだ半分、37才からの外国語

2013年9月 8日 (日)

お役所仕事はカビまみれ?
レッドライン
シリアで化学兵器が使用された、という疑念が高まり、今日(書いているのは2013年9月初旬)もアメリカ軍による介入についての報道が盛んに行われています。
オバマ大統領は、シリア政府が「a red line」つまり「越えてはならないい一線」を超えてしまった、として介入の正当性を訴えたそうです。

"I didn't set a red line," Mr. Obama said during a news conference here in Stockholm. "The world set a red line."
He added, "My credibility's not on the line. The international community's credibility is on the line. And America and Congress's credibility is on the line."(The New York Times )

この「一線」はオバマ大統領が勝手に引いたものではなく、国際社会が認めたものであると主張したのに続いて、「on the line」つまり「線上にある(危ういライン上にある、くらいのニュアンスでしょうか)」のは、オバマ氏ではなく国際社会の信頼性であり、アメリカ議会のそれである、と指摘します。
なんというか、うまいなあ、と感心しますね。発言内容や表現がしっかりと練られている印象を受けます。どう頑張っても意味の明確でない発言(放言?)をしておいて、あとで「真意を誤解された」「誤報だ」などと言い繕う政治家に慣らされているせいでしょうか。

赤い線、赤いテープ
私が英会話教室で割と早い段階で覚えた表現の一つに、「red tape」というのがありました。
これは、いわゆる「お役所仕事」を指しており、その非効率や避けて通れない諦めといった含意があり、あまりポジティブには用いられません。
なぜお役所仕事が赤いテープなのかといえば、はっきりはしないけれど、ある手続きにために必要な膨大な規則や書類が赤いテープで束ねられていたからだよ、と説明を受けた記憶があります。

上記のオバマ氏による「赤いライン」を見て、私が思い出したのは映画のタイトルではなくて、この「赤いテープ」でした。
重要な決断をする上で、公式非公式の手続きにとらわれることなく、リーダーシップを発揮する姿と、どこで足元をすくわれるかわからんとばかりに、手続きを踏みながら時間をかけて「空気が変わる」のを待つのとは、かなり違いますね(だからといって、どっかの前都知事のように何でもかんでも派手にぶち上げては後始末もつけようとしないのは、困りますがね)。

アメリカだと、印象としてはお役所仕事が嫌われ、ネガティブに用いられるのはイメージ通り。
では、手続きにことのほかうるさそうなドイツではどうでしょうか。なんといっても、著名ヴァイオリニストの楽器を一方的に押収しておいて、大臣から返還を求められるとその大臣を相手取って訴訟を起こすような役人がいる国です。もしかすると、お役所仕事を皮肉った表現などないのかも。

役職のカビ?
こういう時に便利なのがWikipediaです。
まずは英語表現で該当ページを出して、左側に並ぶ各国語の項目へのリンクをたどれば、かなりの語について代表的な訳語を調べられます。
さっそく「red tape wikipedia」で調べると...あれあれ、日本語のWikipediaによると私の全く興味のないバンドのライブビデオの名前だそうです。まあ無視して、もう少し下のほうにみつかる英語版Wikipediaの項目へ。そして、次に「Deutsch」のリンクをクリック。

出てきたのは、「Amtsschimmel」という見慣れない単語でした。
とはいえ、「Amt」が入ってますから、間違いはなさそう。解説の冒頭を読んでみても、「Amtsschimmel ist ein kritischer Ausdruck für ein Übermaß an Bürokratie.」とありますから、大丈夫です。
で、「Schimmel」はなにかと調べてみると、なんと「カビ」のことだとか。いや確かに役所に積み上げられ、長期間対応もされずに放置された書類には、カビくらい生えそうなものです。

このドイツ語の項目、実際に読んでみるととても短くて、半分近くはこの表現の由来についての解説で占められています。
読んでみると、はっきりしない、とあって、三つの説が並んでいるだけ。どれもなんとなく「そんなもんか」と納得できるような、そうでもないような...スッキリしませんが、語源なんてどれもそういうものです。
一応最初に載っている、オーストリア帝国での、公務の手続き規範が起源とするのが、それっぽい感じはします。語源もラテン語からきているし。

それにしても、さすがのドイツ人も、やっぱり手続き主義のお役所仕事が過ぎると、嫌になるのですね。
もっとも、役所が法律で定められた手続きを勝手に無視して仕事を始めると、そちらのほうが問題です。非効率なまでの書類の多さは効率的にして行く必要はありますが、それが何らかの不正やミスの歯止めになっていることも多く、なくせばいい、というほど単純でもありません。
それに、なにごとも役人のさじ加減で決まり、結局は賄賂の多寡で物事が決まるような社会を望んでいるわけでも、ないですよね。
そう毎日のように役所と付き合うわけでもないので、たまにストレスを貯めるくらいは、「頭にカビでも生えてんだろ!」と愚痴るくらいにしておくのが、良いのかもしれません。
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