2013年9月 1日 (日)
マイ・オンライン・マガジンその後
ネット「サーフィン」の終わり インターネットが家庭でも使えるようになってきたのは、1995〜1996年ころ。 当時はまだ日本語のWEBサイトなどほとんどなくて、英語のサイトやネットニュースなどを見て回れるだけのものでした。 その後、「Yahoo」「AitaVista」「Infoseek」といった検索エンジンが登場し、リンクからリンクへとたどりながら目当ての情報を探す「ネットサーフィン」という言葉も生まれましたね。WEBサイトの価値を高める要素のひとつが、良質な情報へのリンク集でした。20年も前の話ではないのに、もうだいぶ昔のように感じられます。 検索エンジンの乱立状態は、Googleの登場で終止符を打ち、21世紀に入ってからは他の検索エンジンを使うことも少なくなりました。 続いてweblog、いわゆる「ブログ」が普及し始めるのと同時に利用が進んだのが、RSSでした。ブログやニュースサイトが更新されると、その更新情報がRSSとして配信され、これを読むRSSリーダーを使っていれば、チェック対象にしているサイトの更新状況が一つの画面で簡単に把握でき、設定によっては記事まで読めてしまうというもの。 これで、「ホームページのリンク集」の役割はほぼなくなりましたね。 そしてスマートホンやタブレットの普及が進んだこの数年、RSSリーダーに代わって使われているのが、キュレーションサービスです。 ようするに、数多くのニュースサイトやブログなどから、ある特定のテーマに沿った記事を集めて読みやすく編集してくれる、いわばセミカスタムメイドのオンライン雑誌サービス。パー怒鳴るニュースなどとも呼ばれます。 具体的には「Flipboard」や「Zite」などのサービスです。日本だと「Gunosy」なんかも人気でしょうか。 わざわざリンクをたどりながら目的の情報を探すのではなく、編集された情報を雑誌のように眺めるだけ。ネットはようやく、紙やテレビなどのメディアに近づいてきた、といえるかもしれません。 自分でも作れるオンラインマガジン 以前から、気になるサイトやニュース記事を自分なりにピックアップしてブログなどで公開する人気サイトはありました。 しかし、こうしたサイトの運営って大変そうでした。紹介したいと考える記事のURLへのリンクと、内容の簡単な紹介を毎日のようにブログの記事として編集し、更新しなければなりません。となると、一日分の情報をためておいて一度か二度、更新ということになります。よほどの動機付けがなければつつきません。 今年の春先に「Flipboard」のアプリがアップデートされ、この個人選定の記事ピックアップが実に簡単にできるようになり、かなり状況は変わりました。 実際にタブレットやスマートホン(iOSとAndroidのアプリが公開中です)で使っていればおわかりと思いますが、読んでいる記事が気になったら、「+」ボタンを押すだけで自分の「雑誌」への登録ができます。PCも含めてWEBブラウザで見ている時でも、同じようにワンタッチで登録できるブックマークレットも公開済み。 こうして雑誌に登録しておけば、ソーシャルブックマークと同様に他の人たちと共有ができるだけでなく、自分があとで読み返すためにも使えます。 「英語&外国語 学習リソース集」 以前も紹介したとおり、私は外国語の学習について気になる記事をピックアップしたマイ・マガジン「英語&外国語 学習リソース集」を3月から作成・公開しています。 閲覧数とフリップ数(読者が何ページをめくって眺めたか)が把握できるのですが、今朝の段階で348人、15,379フリップでした。 どうやらこの閲覧数は一定期間の閲覧ユーザー数を移動合計で表示しているようなのですが(たぶん1週間単位くらいではないかと)、6月初旬に100を超えて一時期横ばいになり、8月15日過ぎからまた増え始めています。Flipboardの日本人ユーザーが増えてきているのでしょうか。 日本語の記事だけではつまらない(日本語だと、いつも同じような内容の「英語学習法」や「TOEIC対策のTIPS」、そして単語や表現集みたいなのばっかりですから)ので、半分程度は英語の記事も混ざっています。 私が短時間で読み、内容を理解できる程度の記事なので、おそらく英語中級程度で読める程度のもの、しかもあまり長文でないものを選んでいますので、リーディングの素材集としてもお使いいただけるんじゃないかと思います。 ときおりFlipboardで「英語」「語学」などで類似のマガジンを検索してみるのですが、いまの時点では、日本語で作成しているマガジンの中ではもっとも多くの読者数を獲得できているようです。 もっとも、この先いつまで続くかわかりませんし、新たなマガジンにあっという間に追い越されちゃうかもしれませんけどね。 |
2013年9月 5日 (木)
英語学習のためのインフォグラフィックス
インフォグラフィックス って、聞き慣れないでしょうか? Informationの「インフォ」と「Graphics」ですから、情報を伝えやすく構成された図版のこと。雑誌の図版なんかがこれですね。 で、最近さまざまなインフォグラフィックスをWEBで観ることができます。文章で読むよりもずっと簡単に情報が伝わるものが多く、絵心のない私は感心しっぱなしです。 今回私が見かけて楽しんでいるのは、「The Best Infographics About Teaching & Learning English As A Second (or Third!) Language」というまとめ記事。 英語学習に関わる5つのインフォグラフィックスが紹介されているのですが、どれもとてもわかりやすくて、いっそのことこの調子で語学教材をつくってくれないかと思えるほどです。 最初の一枚には、「言語を学ぶ利点」として、「Travel」「Money」「Intelligence」そして「Love」という4つのカテゴリーで、それぞれけっこうバラ色のことが書いてあります。 これによると、バイリンガルになると旅行中楽だし、良い仕事に就けるし、賢くなってしかもセクシーなんだそうです。 本当かぁ? もっとも教材に使われる○○ 語学教材にはドラマや映画などがよく使われます。 英語の教材として最も多く使われるTVドラマは、「FRIENDS」なんだそうです。私の大好きな「Big Bang Theory」は第6位にランクイン。でも、あのドラマって英語で聞いても早口で、筋はわかるものの言葉遊びの部分はほとんどわからないですけどね。 映画はやはり「ハリー・ポッター」だそうです。続いて「タイタニック」「トイ・ストーリー」、そして「スター・ウォーズ」。 コミックは「スパイダーマン」「スーパーマン」「バットマン」の順庵ですが、これって人気コンテストの結果ともあまり変わらないんじゃないか、とも思えますね。 一方で、英語教師が多く使うTVドラマは「Mr.ビーン」が「FRIENDS」を抑えてトップ。 映画のトップは同じく「ハリー・ポッター」ですが、第2位に「ウォレスとグルミット」が入ってるところなんか、なかなかお目が高いです。 ロマンティックで健康で 英語を母語として話し人が選ぶ、もっともロマンティックな言語は「フランス語」だそうです。これはまあ、納得としても、第二位が「英語」なのはちょっと身びいきが過ぎますね。 続いて「イタリア語」「スペイン語」「アラビア語」と続くのですが、なんだか普段からふれられる言葉から「ドイツ語」だけが落とされましたって感じです。 魅力的な人が多い、英語圏の国の第一位はアメリカ。うーん、情報の信頼度がだんだん下がってきました(笑) そのほかにも、外国語を学ぶと健康にも良いとか、クリエイティブで良い仕事が得られるとか、ずいぶんとバラ色なことが書いてあります。 まあ、これを鵜呑みにしたってしょうがないんですが、ゴガク疲れのときに眺めていると、気分が良くなってきてやる気が戻るくらいの効果は、あるかもしれません。 |
2013年9月 8日 (日)
お役所仕事はカビまみれ?
レッドライン シリアで化学兵器が使用された、という疑念が高まり、今日(書いているのは2013年9月初旬)もアメリカ軍による介入についての報道が盛んに行われています。 オバマ大統領は、シリア政府が「a red line」つまり「越えてはならないい一線」を超えてしまった、として介入の正当性を訴えたそうです。
この「一線」はオバマ大統領が勝手に引いたものではなく、国際社会が認めたものであると主張したのに続いて、「on the line」つまり「線上にある(危ういライン上にある、くらいのニュアンスでしょうか)」のは、オバマ氏ではなく国際社会の信頼性であり、アメリカ議会のそれである、と指摘します。 なんというか、うまいなあ、と感心しますね。発言内容や表現がしっかりと練られている印象を受けます。どう頑張っても意味の明確でない発言(放言?)をしておいて、あとで「真意を誤解された」「誤報だ」などと言い繕う政治家に慣らされているせいでしょうか。 赤い線、赤いテープ 私が英会話教室で割と早い段階で覚えた表現の一つに、「red tape」というのがありました。 これは、いわゆる「お役所仕事」を指しており、その非効率や避けて通れない諦めといった含意があり、あまりポジティブには用いられません。 なぜお役所仕事が赤いテープなのかといえば、はっきりはしないけれど、ある手続きにために必要な膨大な規則や書類が赤いテープで束ねられていたからだよ、と説明を受けた記憶があります。 上記のオバマ氏による「赤いライン」を見て、私が思い出したのは映画のタイトルではなくて、この「赤いテープ」でした。 重要な決断をする上で、公式非公式の手続きにとらわれることなく、リーダーシップを発揮する姿と、どこで足元をすくわれるかわからんとばかりに、手続きを踏みながら時間をかけて「空気が変わる」のを待つのとは、かなり違いますね(だからといって、どっかの前都知事のように何でもかんでも派手にぶち上げては後始末もつけようとしないのは、困りますがね)。 アメリカだと、印象としてはお役所仕事が嫌われ、ネガティブに用いられるのはイメージ通り。 では、手続きにことのほかうるさそうなドイツではどうでしょうか。なんといっても、著名ヴァイオリニストの楽器を一方的に押収しておいて、大臣から返還を求められるとその大臣を相手取って訴訟を起こすような役人がいる国です。もしかすると、お役所仕事を皮肉った表現などないのかも。 役職のカビ? こういう時に便利なのがWikipediaです。 まずは英語表現で該当ページを出して、左側に並ぶ各国語の項目へのリンクをたどれば、かなりの語について代表的な訳語を調べられます。 さっそく「red tape wikipedia」で調べると...あれあれ、日本語のWikipediaによると私の全く興味のないバンドのライブビデオの名前だそうです。まあ無視して、もう少し下のほうにみつかる英語版Wikipediaの項目へ。そして、次に「Deutsch」のリンクをクリック。 出てきたのは、「Amtsschimmel」という見慣れない単語でした。 とはいえ、「Amt」が入ってますから、間違いはなさそう。解説の冒頭を読んでみても、「Amtsschimmel ist ein kritischer Ausdruck für ein Übermaß an Bürokratie.」とありますから、大丈夫です。 で、「Schimmel」はなにかと調べてみると、なんと「カビ」のことだとか。いや確かに役所に積み上げられ、長期間対応もされずに放置された書類には、カビくらい生えそうなものです。 このドイツ語の項目、実際に読んでみるととても短くて、半分近くはこの表現の由来についての解説で占められています。 読んでみると、はっきりしない、とあって、三つの説が並んでいるだけ。どれもなんとなく「そんなもんか」と納得できるような、そうでもないような...スッキリしませんが、語源なんてどれもそういうものです。 一応最初に載っている、オーストリア帝国での、公務の手続き規範が起源とするのが、それっぽい感じはします。語源もラテン語からきているし。 それにしても、さすがのドイツ人も、やっぱり手続き主義のお役所仕事が過ぎると、嫌になるのですね。 もっとも、役所が法律で定められた手続きを勝手に無視して仕事を始めると、そちらのほうが問題です。非効率なまでの書類の多さは効率的にして行く必要はありますが、それが何らかの不正やミスの歯止めになっていることも多く、なくせばいい、というほど単純でもありません。 それに、なにごとも役人のさじ加減で決まり、結局は賄賂の多寡で物事が決まるような社会を望んでいるわけでも、ないですよね。 そう毎日のように役所と付き合うわけでもないので、たまにストレスを貯めるくらいは、「頭にカビでも生えてんだろ!」と愚痴るくらいにしておくのが、良いのかもしれません。 |
2013年9月16日 (月)
外国語教室も五輪関連株?
Tokyo 2020 2020年のオリンピック、パラリンピックの開催地として、東京が選ばれました。 早くもお祭りムードではありますが、せっかく東京で開催されるのだったら、世界中のアスリートと大会関係者、ジャーナリストや観客にとって素晴らしい体験となれるようでありたいものです。 私自身は、オリンピックがすぐに経済効果や社会インフラ投資と結びつけられるのにはいささかげんなりしていました。また、世界のバランスが大きく変わって行く中でイスタンブールでの開催にはとても大きな意義があると感じてもおり、必ずしも東京開催を強く望んでいたわけでは、なかったのですけど。 さて、この開催決定を受けて、さっそく(書き始めたのは9/9の月曜です)不動産や建設関連の株価が上昇しているそうです。いわゆる「五輪関連株」ってやつでしょうか。 大きなイベントに伴ってお金が動き、経済が活性化される期待感は当然としても、2002年のFIFAワールドカップで景気回復しましたっけか? まあ、多少は上向いた記憶もありますが、結局あの頃に抜本的な改革に手をつけきれなかったことが、今現在のさまざまな問題につながっていませんか。 いまこそ外国語 こうした大きな大会が開かれると、海外からの渡航者も増えるでしょう。観光客ばかりでなく、大会関係者やメディア関係者、ビジネスチャンスを捉えようという動きも増えるはずです。 ロンドンでのオリンピックの際には、混雑を忌避して観光客がむしろ減ってしまった、といったニュースも目にしました。しかし、こちらの記事によれば、2013年に訪れるとみられる観光客数は、ロンドンが1,600万人弱なのに対して東京は580万人と、そもそも3倍近い開きがあります。元がロンドンよりだいぶ少ないのだから、きっと東京へのお客さまは大きく増えるでしょう。 ただし残念ながら、日本は「だいたいの場所で英語が通じるところ」ではありません。 むしろ、海外からみれば、「一度行ってみたいけれど言葉が通じない不安が大きいところ」じゃないでしょうか。 このままでは、せっかくのオリンピックも、日本にいっても大変だからネット観戦でいいや、とばかりに、思ったより観光客は増えないかも。それじゃあもったいない。 思うに東京って、世界的に見てもかなりのグルメタウンだと思うんだすよ。しかも、あらゆる価格帯で、それぞれちゃんとおいしく食事ができるし、ほとんどすべてのスタイルの料理が楽しめます。こんなすごい街の魅力は、せっかくだから世界中に伝えて行かなきゃ。 語学教室が満員に? というわけで、これからの7年間、とくに本番が近づく2018年頃からは、外国語教室はどこも満員に、教材が売れまくる、なんてことが起こるかもしれません。五輪関連株として値上がりするかもしれませんね。 なんといっても、まだ7年あります。いまほとんど話せなくても、これだけの時間があれば日常会話くらいはこなせるようになりそうです。実際、私も37歳で英会話教室に通い始め、3年くらい経った時点では旅行中の不安がだいぶ消えていましたから。 でもね、「まだ7年ある」と思っていると、たぶんあなたが本気を出すのは開催日の7ヶ月前になります。いや、7日前かもしれません。 7年間は2,500日以上あります。毎日単語をひとつ覚えていけば、2,500語以上の語彙力になりますし、毎日30分ずつを語学に充てられれば1,300時間近くにもなります。けっこう長いようには思えます。 それでも、たった1,300時間なのです。外国語を習得するためには、決して十分な時間とはいえないでしょう(英語の場合、中学校からの蓄積があるからなんとかなるでしょうけど)。「まだ7年ある」ではなく、「たった1,300時間しかない」と思ったほうがいいかも。 さして努力をしなくても、「○○をするだけで、ある日突然英語が口から~」なんていううまい話は、語学教材の宣伝のなかにしかありません。 7年後の東京オリンピック/パラリンピックで、海外からのお客さまに日本のおもてなしを差し上げたいと思ったら、さっそく今日からスタートすべき。方法は教室でもネットでも独学でも何でもかまいませんし、途中で変えても大丈夫。早く始めれば、そのぶん毎日の負担が小さくなり、続けられるはずです。 |
2013年9月23日 (月)
え、「予定はない」の?
アンケートなんて 複数のWEBニュースサイトで「東京オリンピック、飲食店やサービス業の英語力は?」なる記事が掲載されています(私が最初に見たのは、「Business Media誠」)。 なんでもオンライン英会話のサービス会社が実施した調査結果らしいのですが、残念ながらいまのところ(書き始めは9月17日火曜日)アンケート結果はそのサービス会社のサイトには掲載されていないようです。 アンケートに基づく記事によると、首都圏在住でサービス業・飲食業従事者(25~59歳)の男女484人の回答を得たものらしいです。 だいたい、アンケート結果というものはどのような母集団にどんな調査票を使って行うかで、かなり内容がぶれるものです。学術調査ではなく、マーケティング用の調査なんてほとんどは予め用意したストーリーに説得力を持たせるために集めるようなものですから、あまり信用せずに参考情報として見ておくのが良いものです。 半数以上は来客増に期待 記事には二つの円グラフと、ひとつの棒グラフが載っています。 円グラフのひとつは、「オリンピックが開催されたら、お勤め先の来客数や売上の増加を期待しますか?」という質問への回答です。 「大いに期待する(22.7%)」と「やや期待する(28.9%)」を合わせて、50%超の回答者が期待しているとのこと。もっとも、商売をやっていて来客や売上増に「期待しない」というのが30%弱いるというのは、「これ以上忙しくなっちゃかなわん」ということでしょうか、不自然にも思えます。 期待の内容は本文に二つだけ紹介されていて、「外国人観光客の来店客数の増加」が37.4%、「特別商品・サービスの提供」が21.7%なんだそうです。 設問の内容が定かではありませんが、「期待している」人にその内容をシングルアンサーで質問しているとすれば、約19%の回答者が外国人間顧客に期待をしていることになります(51.6%×37.4%)。すなわち、首都圏のサービス業・飲食業従事者の5人に1人は、オリンピック開催に伴って海外からの来客増に期待しているのですね。 でも英語は話さないし、学ばない さて、その海外からの来客に対応する英語力については、「まったくないと思う(48.6%)」「あまりないと思う(28.5%)」と、合計77.1%が自信なさげです。 日本人というのは必要以上に謙虚なところがあって、この8割弱の人たちもいざとなったら身振り手振りも含めてナントカできちゃう、ということがけっこうあります。実際に「まったくなんともならない」ひとはこの半分以下なんじゃないかと。 とはいえ、全体の8割弱が英語力に自信を持っていません。 でも5人に1人は外国人観光客にもっときてほしいわけですから、ここは英語学習のチャンスと思うのが自然でしょう。次には英語学習の状況についての棒グラフが登場します。で、これが衝撃の内容。 「英語学習の状況についてあてはまるものを教えてください」という問いに対しての回答で最も多かったのは、「学習する予定はない」で、なんと59.9%です。首都圏の(すなわち普段でも外国人への接客機会は多いはず)サービス業・飲食業従事者の実に6割は、今後も英語を学習するつもりがないのですね。これは衝撃。 続く回答は、「学習を始めたいと思っているが、何も手をつけていない」で30.2%。 すごいですね。「今後も学習のつもりがない」と「その気はあるが何もしていない」を合わせると、実に90.1%が現時点では接客用の英語をなんとかしようとはしていないのです。 (「まだやってない」だけですぐにも始めるかもしれない、という指摘があるでしょうが、「英語必要だけど、まだやってない」人って、その状態が何十年も続くものですよ。少なくとも、私は大学卒業から15年間そうでした) 期待しないんだったらいいけど いやねえ、全体の半数以上は来客増に期待していて、5人に1人は外国人の来客増に期待しているわけでしょ。 なのに、英語での積極には8割が自信を持っていなくて、それを改善しようという行動を起こしているのは1割にも満たない。これはかなり深刻な矛盾です。端的に言えば、「お客にはきてほしいけど、口は利きたくない」っていってるようなもんですから。 冒頭に書いたとおり、これは英会話サービス会社が取ったアンケートなので、「こんなにも日本人は英語が苦手、でも我が社の簡単なオンラインレッスンなら...」というストーリーのための調査なんでしょう。 日本のメディアは日本人がいかにダメか、という話が大好きですから、きっと記事にも仕立てやすいんだと思います(私もこうやって引っかかっている)。なので、出てきた情報をそのまま受け取って騒ぎ立てる必要は、ないかもしれません。 でもねえ、飲食店なら英語のメニューを用意しておくとか、最低限必要な挨拶だけはおぼえて練習しておくとか、すぐにでもできることがあるでしょう。 その程度は当然やっているけど、「英語学習の状況」だとは思っていないだけかもしれないけれどね(そう期待したい)。 |
2013年9月28日 (土)
その日本語は、「ササらない」
「ヤバい」人とは話さない 私の知人の一人に「物事を肯定的に表現する際に『ヤバい』を使う人とは話しません」というかたがいらっしゃいます。 私もこの点に関しては完全に同意していて、「美味い」「素晴らしい」「巧みだ」「面白い」など、何かを褒めるとき「ヤバい」済ませようとする言語感覚の持ち主とは、話していて愉快になることが非常に少ないと実感することが、普段から良くあります。 これは話し言葉だけではなくて、SNSなどでの発言やコメント、メールの文章などでも同じです。 むしろ、書き言葉で「ヤバい」を使って良いと思っているのは、話し言葉だけで用いる人たちよりもさらに始末が悪いとさえ言えるでしょう。 そもそも「ヤバい」状態というのは、悪事が露見して追い詰められた悪党や、状況が極めて不利であることを自覚した人物が発する言葉。たかがアイスを味見しただけでヤバいと感じる感受性の強さには感心しますが、受を外して言語への感性という点では、全く感心しませんし、関心もありません。 自分の心の動きや、見聞きした物事などをさまざまに表現するのが言葉であって、その対象や様態にもっとも適した表現を探す感覚が、言葉を使う上ではとても重要です。 極論ですが、肯定はすべて「ヤバい」、否定はすべて「ムカつく」で済ませてしまって何も感じない人は、外国語を学ぶ上で重要な要素を欠いてしまっていると、私には思えます。 出版社の仕業? 話は変わりますが、書籍のタイトルや宣伝文句というのは、多くの場合出版社が決めてしまうものなのだそうです。著者の意見も参考にはされるのでしょうけど。 有名なところでは、「世界の中心で、愛をさけぶ」というベストセラー小説のタイトルは担当編集者がつけたもので、作者が考えていたのは「恋するソクラテス」というものだったとか。まあ、どうせなら店頭で目を引くタイトルのほうが、商売上は得策なのでしょう(この「世界の中心で~」というタイトルについては、言いたいことは他にもありますが)。 上述のように、「ヤバい」の使われかたに違和感を持つのはおそらく少数派で、しかも周囲の人々が使ったときに異議を唱えるのはさらに少数なのでしょう。 なので、「世間一般に受けそうなもの」が私には極めて不快、というケースは結構あります。最近の代表例が、関谷英理子さんの新著の、このタイトル。 これはもう、関谷さんのツイッターでタイトルが予告された時から「うわっ、気持ち悪い」としか思えず、最近作でもある「同時通訳者の頭の中」をかなり楽しんで読んだにもかかわらず、『どんなことがあっても手にしない本』リストの上位にシッカリと書き留めました。 何ですかいったい「ササる」という品性のかけらもない表現は。 これは対話の相手の心に響く、自分の表現したい内容が的確に届く、ということなのでしょう。パッと見てわかりやすい、強い言葉での表現が難しかったのでしょうけれど(たしかに『その英語、こう言いかえれば届くのに!』では弱い)、「ササる」なんて言葉を堂々と使う時点で、英語以前に日本語の感覚が受け入れ不可能です。私にとってはね。 ターゲットは誰? この「ササる」、じつはオジサン世代(ざっくりと40~60代)のサラリーマンには、好んで使うかたがたがそこそこ多い表現です。本人は「刺さる」とでも言ってるのかもしれませんけど。 意味合いとしては、広告宣伝ならターゲットとする顧客のニーズによく適合していて注意を惹く、といった使われかたをします。上記の本のタイトルとも合致していますね。 いつごろ誰が使い始めたのかはわかりませんが、こういう表現を多用する人に限って「どうすればササるのか」についてはノーアイディアで「もっとササる文句を」と駄々をこねるだけなのです。複数の実例を知っていますが、例外なくそうだったので、あながち私の周囲にロクなオジサンがいなかった、というだけではないでしょう。なんというか、必要もない符帳を使って悦に入るのは、年を重ねるほどにみっともないものです。 付記しておけば、20代、30代でこの表現を使う人物には、お目にかかったことがありません。 私の認識では、このように「ササる」は、中高年のサラリーマンに共有されているらしい、ボキャブラリーのひとつです。 出版社が意図的にこの語を選んだのなら(関谷さんの発案だったら、かなりガッカリですが...)、選んだ出版社員がオジサンばかりだったか、もしくは、この本を売りたいターゲットがオフィスで「ササる、ササる」を乱発しているオジサンたちである、ということでありましょう。 冒頭で書いた「ヤバい」の用法と同様に、「ササる」などと平気で口にする人の言語への感性など、知れたものです。そんな人たちに向けてつけてしまったこのタイトル、本は売れるかもしれないけれど、その内容は「ササらない」んじゃないかな。 |